金沢美術工芸大学 鈴木浩之と 宇宙航空研究開発機構 大木真人 が共同研究として取り組む「地球観測衛星を利用した地上絵アニメーション表現技術に関する研究」の2022年度の活動と2023年度の計画について鈴木がスライドを使って説明しています。

【概要】
1980年にアメリカの地球観測衛星LANDSAT-3が鏡で描かれた地上絵《リフレクションズ・フローム・アース》(トム・ヴァン=サント)を観測するなど、数々の美術制作に人工衛星による地球観測技術が応用されてきた。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する衛星に、電波(Lバンド)を利用する地球観測衛星「だいち2号」(ALOS-2)がある。 ALOS-2は曇天下の地表を宇宙から観測できる特性を持ち、衛星からの観測でありながら雲が写り込まないため、参加者らが協力して描く巨大な地上絵制作について天候を理由に中止する可能性を低くすることが出来る。本研究は2022年~2024年JAXA地球観測研究公募(EO-RA3)の採択を受け、ALOS-2による地球観測システムを利用し、直線60mの延長線上に電波反射器を正確に(14日の間をおいて誤差1メートル以内の精度で)2度配置し衛星画像上に電波反射を写し込む描画実験(ALOS-2で初の試み)を成功させ、従来は静止画として地上絵の観測を行ってきた人工衛星が「地上絵アニメーション」の撮影装置として機能することを明らかにした。何枚もの「流星」の地上絵を長い期間大勢で〈コマ撮り地上絵アニメーション〉として紡いでいく撮影技術は、今後JAXAが打ち上げる予定の(ALOS-2よりも高頻度で同じ地点を観測可能な)ALOS-4の運用開始と共にその応用が活発化することが期待される。この表現技術の進展により参加者等が宇宙から観測可能な「直線移動する星=流星」として自らを認識することで地球外の視点による新たな地球観(概観効果)を疑似的に獲得するアートプロジェクトが繰り返され、新たな教育の可能性が広がると考えている。本研究は大きな撮影装置を利用して地上にアニメーションを描く経験がもたらす新しい美学的な探求の広がりであると同時に、STEAM教育として機能するアートプロジェクトとしてJAXAと協力して実施されている。本発表では、2021年度までの予備研究で開発したハンドメイド コーナーリフレクタ(CR)による〈点〉の描画技術の改良点と、2022年度にRESTEC研究助成や三谷研究開発支援財団研究助成の採択を受けて実施した準天頂測位衛星「みちびき」利用のネットワークRTK法応用による地上配置CRの配置位置精度向上が確認可能な実験結果を発表するとともに、「地上絵 アニメーション」の制作プロセスについて触れる。

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