総合大学の学際的な活動としての芸術作品制作

茨城大学の場合

 

2016年3月に《いばらきけんぽく座》の活動は茨城大学との連携を始動した。茨城大学とはこれまでにない人数と規模、総合大学ならではの連携活動を実現させた。同大学の全5学部のうち人文学部(19名)、教育学部(7名)、理学部(7名)、工学部(1名)の4学部34名の学生・院生と、教職員6名が、まず、同年6月11日・12日に茨城県北芸術祭実行委員会主催の「だいちの星座─いばらきけんぽく座─参加説明会・ワークショップ」や、同年8月9日に常陸大宮市アーティスト発掘推進事業「だいちの星になろう! 大きな電波反射板に自分で考えた星座を描くワークショップ」でチューターとして活動した。また、同年8月11日茨城県北6市町会場での「人工衛星による《いばらきけんぽく座》の撮像」においては撮影箇所の運営に加わり制作を補助した。さらに、同年9月17日─11月20日「《いばらきけんぽく座》とドキュメント及び電波反射器の展示」では、作品展示の補助という形で携わった。同年10月29日、鈴木と大木は茨城大学宇宙科学教育研究センター主催により「アンテナ、人工衛星、地上絵?─電波でみる世界」と題したプログラムに参加し、子どもを対象とした〈電波〉を題材とした芸術と科学の世界を伝える教育に貢献した。

《いばらきけんぽく座》の茨城大学参加メンバーをまとめる中心的な役割を務めた教育学部の片口直樹准教授は活動を振り返り、《だいちの星座》が茨城県北芸術祭のプログラムに加わったことで、芸術を介して学部間の連携を図る可能性が広がったと述べている。片口氏は、本活動が、

● 地域との連携で街を活気づける
● 多くの学生が芸術活動の運営に参加できる機能を有する
● 芸術祭への学生の関心を高める期待に応えた

と評価する一方で、一般参加者に魅力が十分伝わったかという点で未知数な部分もあると指摘している。加えて、片口氏は、茨城県が古くから芸術と科学の両分野にとって縁の深い地域であり、十分な準備期間を確保することで、芸術と科学が交わる本活動が、今後、地域社会からより大きな関心を得られるのではないかと分析した。《いばらきけんぽく座》の活動には人文学部の西野由希子教授、工学部住谷秀保助教、理学部百瀬宗武教授や米倉覚則准教授、さらには社会連携センターの杉山大樹氏らが加わり、学際的且つ地域に根付いた繋がりが実現した。〈宇宙〉というキーワードが出会いの場をつくり、異分野の学生や教員が集まる機能が確認できたといえる。片口氏は、美術教育学の専門的な観点から、子どもの想像を誘発する活動であり、且つ、答えや結果がすぐ出ないことから想像の状態が持続する点を評価している。また参加者自らが作品の一部(星座の星)と化すプロセスを体感することで、それぞれに想像力の活性化を促していたと分析した。本活動は子どもだけでなく、様々な分野の学生が影響し合える魅力があり、次回の活動が期待されると述べている。活動に参加した学生からは、

「未知の方法で絵を描くプロセスに惹かれた。徐々に明らかにしていく活動に参加出来、貴重な時間を過ごせた。」[教育学研究科1年 程田華奈]

「人工衛星から何かを写す為に塩ビ管と金網を使う意外性に興味がわいた。理論を実際に行動して確認することが楽しかった。」[大学院 理工学研究科1年 金坂青葉]

「天文分野のサークル活動を続けていた関係から〈地上に星座を描く〉という活動に興味を持った。完成した作品が地形とともに地域の様々な人の生活を反映したグラフィックとなっており驚いた。」[理学部3年 本多将人]

といった感想が聞かれた。

 

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